捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
「そんなに緊張しないでいいから。ほら、肩の力を抜いて、瞼をゆっくり閉ざしてみて?」
そんな私のことをレオンがリラックスさせようとしてか、両肩を両の手でポンポンとしてくれた。
そうしたら不思議と、硬直していた身体から力がすーっと抜けていく。
「こ、こう?」
「そうそう、その調子。はい。目を開けてみて」
そうこうしているうちに、頭上で指をパチンと弾くような音がしてすぐに、レオンの声に促され開け放った視界の先には、大きな姿見鏡があって、そこに映し出されている自分の姿に私はハッと息を呑んだ。
そしてその直後、驚きを隠せないでいる私は、姿見鏡の中の自分の姿を目を瞬かせ何度も見返すのだった。
こんな風に驚いてしまうのも無理はない。
淡いブルーの上品なプリンセスラインの素敵なドレスに、キラキラと煌めくティアラ。
瞳の色と同じく濡羽色だったはずの髪も綺麗な銀髪のサラサラヘアとなっており、綺麗に結い上げられていて、ほんのりとメイクもなされている。
確かに顔こそ私だが、幼い頃から夢に見ていたシンデレラの姿がそこにあったからだ。
しばし茫然自失で姿見鏡の中の自分の姿を凝視したままだった私は、レオンの放った感嘆の声により我を取り戻した。
「あー、なんて美しいんだ。できることなら、僕のこの腕の中に閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくないくらいだよ」
あんまりレオンがまじまじと全身を舐め回すように見下ろしてくるものだから、恥ずかしくてどうしようもない。
「////……ちょ、レオン。これじゃあ、目立って仕方ないから、この地味な顔を活かして、もっと目立たないようにしてくれたら、それでいいから」
羞恥を覚えつつも、こんなハロウィンの仮装パーティーのような格好で人前に出るなんて冗談じゃないと、大慌てで捲し立てた私の言葉は、残念なことにレオンには届いていなかったようで。
シンデレラの格好よりはだいぶんマシになったものの、黒髪はキラッキラの金髪ヘアに豹変していた。
それだけじゃない。
金髪もボリュームたっぷりのゆるふわロングで、どこかの貴族のご令嬢か、成金のお嬢様風の可憐なドレス姿へと変化していた。
おそらくレオンの趣味だろう。