捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
けどこれも好きだとかそういう感情じゃない。
異世界にきて、追放された聖女として追われる身となったことで、狭い世界で過ごしているから、執着してしまっているせいに違いない。
そうやって、あのキスの一件以来、胸の内で燻っているこのモヤモヤとした感情に、幾度もこうして無理くり理由をこじつけてきたように、そうっと蓋をしたのだった。
そんなことをやっていると……。
唐突に背後のレオンから鋭い指摘がなされ。
「お嬢様、どうされました? なんだか顔色が優れないようですが、ご気分でもお悪いのですか?」
私はビクンと肩を跳ね上げてしまう。
どうにも執事仕様のレオンの振る舞いと口調に慣れないせいだ。
「……う、ううん。大丈夫。それよりレオン」
「なんでございましょう? お嬢様」
私の言葉に返事を返してくるレオンは、毎回毎回嬉々として、心底愉しんでいるようだ。
ここはちゃんと言葉にして伝えて、改めてもらわないと、身が持たない。
「その口調、なんとかならない? なんだか落ち着かないんだけど」
「お嬢様、さっきも申し上げましたとおり。己の私利私欲のために聖女を捕らえようと躍起になっている輩がどこに潜んでいるやもしれません。ですので、万が一に備える必要があるのです」
けれどレオンからの返答は、至極ごもっともな言葉だったために、あえなく撃沈。
早々に諦めるしかないらしい。
「……はぁ……わかったわよ」
「ご理解いただけたようで何よりでございます。お嬢様」
「はぁ~」
「おやおや、溜息なんて零されて、どうされました?」
落胆して溜息を零す私に、理由なんて分かりきっているクセに、わざと惚けて執事仕様の丁寧な口調で私のことを揶揄ってくるレオンのことが恨めしい。
「……レオンの意地悪。フンッ!」
ムッと盛大にむくれた私が、フェアリーを真似てプイッとそっぽを決め込むと。
「そんなに怒ると、可憐な愛らしい顔が台無しだよ。ノゾミ」
「////ーーッ!?」
耳元に唇を寄せてきて、不意打ちのように熱い吐息と甘やかな声音で鼓膜を震わされてしまい、私はたちまち全身を真っ赤に染め上げられてしまうのだった。
それが無性に悔しくて悔しくてどうしようもない。