捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
そこに続けざまに、耳に流れ込んできたレオンの次の言葉によって。
「ちゃんとわかっているよ。ノゾミがそんなこと思ったりしないってこと。この三ヶ月の間、ずっと傍でノゾミのことを見てきたんだからね」
さっきレオンが放った言葉が私の気持ちを試すものだったことを悟った私は、恥ずかしいやら悔しいやらで思わずレオンに食ってかかるのだった。
「もう、レオンってば信じらんないッ! どうしてカマなんかかけたりするのよッ!」
すると、途端に飄然としたものから気まずそうな表情へと取って代わったレオンから、耳にするだけで胸を締め付けられてしまうほどに、切なげな声音が放たれてしまう。
「そんなの、ノゾミの気持ちを知りたいからに決まってるでしょう? 言ったよね? 僕はノゾミのことが好きだって。こうやってノゾミと一緒にいるだけで僕は幸せなんだ。けど、もうそれだけでは物足りないって言ったら、どうする?」
最後に、心の中を読み取ろうとでもするかのように、真っ直ぐに熱い眼差しで見据えながら問い掛けられてしまった私は、瞬きも忘れてレオンのことを凝視したままでいる。
勿論、それは、まさかそんなことをストレートに訊かれたことに対する驚きからだけれど。
さっきレオンへの自分の気持ちを確信した際に、願ってしまったのと同じ想いでいてくれたことが、驚きでもあると同時に嬉しかったからだ。
だからといって、レオンの想いに応えるわけにはいかない、という気持ちだってある。
いずれ記憶を取り戻したレオンは隣国に帰ってしまう。
その時にきっと私のことが重荷になってしまう。
だったら今のうちに諦めた方がきっと傷だって浅く済むだろう。
きっとそれがお互いにとっても、一番いい方法に違いない。
溢れ出そうになっていた想いをなんとか胸の奥底に抑え込んだ。そして。
「……レオン、ごめんなさーー」
キッパリと『その気はない』そう伝えようとした私の声は、最後まで聞き届けられることはなかった。
何故なら、苦笑を漏らしたのを皮切りに、いつもの飄然とした姿に様変わりしたレオンから、私の声を封じるようにして、
「あーあー、ノゾミは心根が優しくて素直だから、こうやってすーぐ騙されちゃう。心配だなぁ」
そんな冗談めかした言葉が返ってきたせいだ。