捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 それからは、お婆さんと他愛ない会話を交わしているうちに、予定通り一時間ほどすると、王都の中央にそびえるようにして建っている、某テーマパークのシンボルかと見紛うほどにご立派な王城が姿を現した。

 馬に跨がっているために、視界を遮るものなどなにもない。

 そのため、王都をぐるりと取り囲むようにして構えられている高い城壁の開け放たれた門扉の両側には、二人の守衛の姿までがハッキリと視認できた。

 確か、追放されたのは王城の裏側で、あれよりは小さな門扉から放り出されたような気がする。

 それにこれまで読んできた物語の中でも、守衛がいて通行人を厳しく取り締まっていたような気がするから、単に気になっただけのことだった。

「ねえ、レオン。あの門扉って誰でも通れるの?」

「通行証を見せる必要があります。ご安心ください。この通り、ちゃんと用意してありますので」

 レオンが通行証をもっていたのには驚いたが、おそらくそれも魔法によるものだろう。

 なんてぼんやり思っていたときのことだ。

「あのう、お嬢様。私はここで」

「え? 家まで送っていきますよ」

「いえいえ、とんでもない。みすぼらしいおんぼろ屋敷を見せるわけにはまいりません。ここで結構ですので、それでは」

 門扉まであと数メートルという段になって唐突に、ここまででいいと言い出したお婆さんを引き留めようとするも、足が悪かったはずが、馬から飛び降りてそのまま逃げるようにしてどこかへ走り去ってしまうのだった。

「おそらく、乞食の虚言でしょう。お嬢様が気に病むことはありませんよ」

「……う、うん」

「お嬢様、あちらに見えますのが市井ですよ」

「わあっ! 凄い賑わい。お祭りみたい!」

 なんだかスッキリとしなくて、モヤモヤとしたものが胸の中で澱みのように残っていたのが、レオンのその声によって、私の頭は市井のことで一杯になるのだった。

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