捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
それなのに……。命の恩人であるルーカスさんを残して、レオンと一緒に隣国になんて行けるわけがない。
なにより、家族同然である皆と離ればなれになってしまうなんて、そんなの絶対に嫌だ。
叶うことなら、精霊の森のルーカスさんの家で、ずっとずっと皆と一緒に暮らしたい。
勿論、レオンも含めてだけど、レオンには帰る場所がある。
それと同じで、私の帰る場所はルーカスさんの家以外に存在しない。
「……とっても有り難い話だけど、レオンとは一緒に行けない。命の恩人であるルーカスさんたちと離ればなれになるなんて考えられない」
「そんなの、いつでも会いに行けばいいじゃないか。隣国なんだから、すぐだよ」
「ごめん。そんなことできない」
「待って? ノゾミ。返事はすぐじゃなくてもいいんだ。ゆっくり考えてみてよ」
「いくら考えても答えは一緒だから」
「じゃあ、こうしよう? 僕のことをもっとよく知って、ゆっくり考えてみてよ。焦らなくていいから。ね?」
「でも、さっきの男の人、知り合いなんでしょう? 記憶を取り戻したんなら、すぐに帰らないといけないんじゃないの?」
「あっ、ああ、あれは、僕のお目付役だから気にしなくていいよ」
「おめつけ……役?」
ーーそれって、貴族の人にはついているものなの? よくわかんないけど。
「そう。わかりやすく言えば、僕専用の執事ってところかな。さっき話したように、うちの家系は王家の血筋でね。古い家だから、色々あるんだよ。あっ、でも、元々しばらくはこの国に留まる予定だったから、すぐに帰らなくても大丈夫だよ」
「……そ、そうなんだ」
レオンとの押し問答の末、私には考えの及ばない話題になったところにきてのレオンの『すぐに帰らなくても大丈夫』という言葉に、頑なだった心がふっと緩んで人知れず安堵していた、その不意を突くように核心を突かれてしまい。
「それより、ノゾミの気持ちを聞かせて欲しい。さっき泣いてくれたのは、ただの同情から? それとも、僕のことを想ってくれているから?」
「////ーーじ、自分でもよくわからないんだけど、気づいたらレオンのことばっかり考えてしまってて。感情がコントロールできないっていうか。それってつまり、その、レオンのことが……好、き……だから、だと……思う……けど……」
自分の気持ちを正直に説明していくにつれて、これって、『まんま告白じゃないか』そう思うと、段々恥ずかしくなってきて、終いの方は尻すぼみになってしまった。
そんな私のことを、やっぱり蕩けるような甘い微笑を浮かべているレオンは、じっと熱い眼差しで見つめたままでいる。
お陰で、ますます恥ずかしさが募っていく。
そこへ、レオンからなんとも甘やかな声音での甘い台詞が投下された。
「ノゾミにそんな風に想ってもらえて、とっても嬉しいよ。僕もノゾミのことがどうしようもなく、好きで堪らない。ノゾミ、今すぐ、僕のものになってほしい。駄目かな?」
優しい蕩けるような甘い表情をしたレオンが私のことを熱い眼差しで見つめてくる。