捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
めくるめく激情
こうしてはじまったレオンとの口づけは、それはそれは甘味なものだった。
以前、交わしたものとは比較にならないほどに。
互いが想い合っている気持ちがそうさせるのかはわからないが、好きな相手とのキスが、こんなにも幸せに満ちたものだとは知らなかった。
ちょっと気を抜いただけで、今にも蕩けてなくなってしまいそうだ。
ーーあぁ、幸せだな。ずっとずっとこうしていられたらなぁ。もういっそ溶け合って、レオンとひとつになれればいいのに。
優しく啄むだけだったものが、唇の微かな隙から忍ばされた、レオンの熱い舌に咥内を蹂躙されているうち、蕩かされた思考でそんなことを願っていた。
キスが深まりあふれかえっていた水音が不意に途切れたかと思うと、キスを中断したレオンが恍惚な表情を浮かべて、私のことを胸に抱き寄せ、甘く囁きかけてくる。
「あぁ、ノゾミ。僕だけのノゾミ。片時も離れずに、もうずっとこうしていたくなる。もういっそ、ノゾミと溶け合って、ひとつになれればいいのに。ノゾミと心が通じ合えたのがどうしようもなく嬉しくて、幸せで、そんなことを真剣に願ってしまうよ」
レオンが私とまったく同じことを願ってくれていたことが嬉しくて、私は思わず、「ふふっ」と笑みを零してしまうのだった。
それを耳にしたレオンは、馬鹿にされたとでも思ってしまったのだろうか。
ムッとした表情で子供じみた声を放った。
「そんなにおかしいかい?」
そんなレオンのことがどうしようもなく愛おしく思えてくる。
同時に、早く誤解を解いてあげたいとも。
「ううん。私もレオンと同じことを思ってたから、嬉しくなったの。私も凄く幸せ」
それから『今夜だけは』、そう思っているせいか、自分でも吃驚するくらい素直な言葉が零れていた。
そんな私の言葉を耳にしたレオンは、私のことを広い胸にむぎゅうっと掻き抱くと。
「あー、もう。そんな可愛いことを言われてしまったら、もう僕、自分のことを抑えられないよ」
心底困ったように、喉奥から絞り出すようにして苦しげに、吐息交じりの声を響かせた。
こんなにもレオンは私のことを想ってくれているんだ。
だったら私も、レオンに応えてあげたい。それにレオンのことをもっともっと知りたい。
そんな想いに突き動かされるようにして、本能の赴くままに想いを紡ぎ出していた。
「いいよ、抑えなくても。どんなレオンのことも好きだから、もっともっと見せて欲しい」