捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
「あー、ノゾミ。そんな可愛いことばかり言わないで? 本当に、もう、これ以上そんな可愛い顔で可愛いことばかり言われたら、自分でもどうなるかわからないから、怖いんだよ」
するとレオンから思いがけない言葉が返されて、ある可能性に気づく。
ーーもしかして、レオンもこういうことは初めてなのかな? だったら嬉しいなぁ。
そんな望みを込めて問い掛けてみる。
「ねえ、レオン。レオンもこういうこと初めてなの?」
「そうだよ。こういうことどころか、こんな風に好きだと思ったのも、触れたいと思ったのも、ノゾミが初めてだよ。僕は、家族以外には、ずっと心を閉ざしてきたからね。だから、ノゾミとの暮らしは心底楽しかったし、とても幸せだったよ。あのままずっと呪いなんか解けずに、狼の子供のままでいいとさえ思っていたくらいだよ」
そうしたら、レオンからは、思った以上のものが返されて、心の底から嬉しいと思ったし、自分もどんなにレオンの存在に救われてきたかをわかっていて欲しいとも思った。
「私も。私もずっとレオンが傍にいてくれたから、心強かったし、少しも寂しくなかった。何もかも一緒だね」
「ああ、そうだね。きっと僕たちは、こうなる運命だったんだよ。僕のことを見つけてくれて、ありがとう。僕のことを好きになってくれて、ありがとう。ノゾミ」
「うん。私も、そう思う。私のことを好きになってくれて、ありがとう。レオン」
そう応えながら心の片隅では、レオンがいうように、もしも本当に、この出会いが運命であるなら、いつの日にかきっと叶って欲しい。
ひっそりとそんなことを希っていた。
たとえ叶わない願いだとわかっていても、そう願わずにはいられなかったのだ。
「ノゾミ、愛してるよ」
「私も。レオンが好き。愛してる」
今一度、互いの想いを確かめあうように、ソファで隙間なくしっかりと抱きしめ合い、愛を囁き合った。
それからは、見かけは執事仕様ではあるものの、王子様然としたレオンによって、お姫様の如く優しくふわりと抱き上げられた私は、ベッドへと横たえられ、大事な宝物でも扱うようにして、優しく慎重に、身に纏っているドレスを寛げられているところだ。
その一部始終を目に焼き付けるかのように、レオンの熱い視線がじっと絶えることなく注がれている。
それがどうにも恥ずかしくてしょうがない。