捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 そうしたら、ゴクリと唾を呑んだレオンの喉元が上下し、瞬く間に、宝石のように冴え冴えとした綺麗な蒼い瞳に、燃え立つような情欲の烈火をくゆらせた。

 あたかも野生の狼の雄を彷彿とさせる危うさと獰猛さ、そして妖艶さを纏ったその様は、気高く、そしてどんなものより美しい。

「わかったよ。今すぐに僕のものにしてあげる。嫌と言うほどにね」

 そんなレオンの姿に魅入られたように惹きつけられた私は、どこか夢見心地で、ぼんやりと見遣っていた。

 そこへゆっくりと私の身体にのしかかってきたレオンによって再開された、甘やかな口づけにうっとりと酔いしれているうち、いつしか唇から首筋を辿って鎖骨へというように、レオンの柔らかな唇が至るところに這わされていて。

 時折、牙を穿つように甘噛みされると、そこから生じてくる甘やかな痺れに、身体が狂ったように身悶え、小刻みに打ち震える。

「……あっ」

 レオンの熱く滾った舌と柔らかな唇とが、しだいに下へ下へと這っていく。

 レオンの手は、私の背中へとまわされていて、あたかも逃がさないと言わしめられているようだ。

 こうしてレオンとのめくるめく甘やかな時間は過ぎていき……。

 つい先ほど、人間と獣人のハーフであるが故に人間とは比較にならないほどご立派なレオンのアレのことも魔法で解決した。行為の途中突然レオンが獣人の姿になってしまったことには驚いたけれど、レオンのこれまでの苦悩を思うと何も言えなかった。けれど姿が変わろうがレオンには違いないから問題ない。

 それから驚くことにレオンもあの淫夢を見ていたようで、『あぁ、まるで、幾度も僕のことを惑わせてきた夢のようだ』と言っていたが、淫夢だけに肯定せずうやむやになったが、おそらくそうなのだろう。

 だとしたらきっと、レオンが言ってた通り、この出会いは運命だったのかもしれない。

 ここは、雰囲気を壊さないためにも、潔く、魔法で避妊と痛みを感じなくしてくれているという、誠実なレオンの言葉を信じてすべてを委ねることにして、私はそっと瞼を閉ざした。

 こうして、レオンとの、この世のものとは思えないほどに甘やかで幸せな特別な夜は更けていったのである。

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