捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
精霊の森での穏やかな日々
キャンプ場で大きな地震に巻き込まれたはずが、どういうわけか異世界に聖女として召喚されてしまってから、一月ほどが経過した。
追放された聖女として野心のために追われる身となって、一時はどうなることかと思ったけれど。
心優しいルーカスさんのお陰と、偶然にもこちらの気候も同じく春だったことで、世界は違えど過ごしやすい環境に恵まれている。
向こうの世界では、教育熱心な両親の所為で、厳しい門限や、口うるさい干渉があったけれど、それもなく、意外にも快適な暮らし心地だ。
最初こそ、スマホどころか、電気も水道もないこの異世界の暮らしの不便さを嘆いたりもしたが、住めば都。
優しいルーカスさんと陽気な小妖精とのんびりまったり田舎暮らしを満喫していた。
といっても、ただお世話になっているのも肩身が狭い。
なので聖女として召喚されたお陰で備わっていたらしいいわゆるチートな能力を利用し、現在私はフェアリーと一緒に薬草探しに勤しんでいるところだ。
ルーカスさん曰く、聖女に召喚された際、授かっていたらしいチートな能力がまだまだ備わっているらしいが、それもここぞというときに発揮されるか、自然に目覚めるかのどちらからしい。
少々まどろっこしい気もするがわくわくもしている。
一体どんなパワーが秘められているのか、メチャクチャ楽しみだ。
これまで平々凡々どころか勉強一色だったので、自分にそんなファンタジーなことが起こるなんて楽しみでしかない。
とまぁ、そんな感じで、こちらでの暮らしをエンジョイしていた。
今だって、薬草を探すのにもドキドキわくわくの連続だ。
「……なんだろう。濃い紫色のどんよりとした影のようなものが見えるから、毒草とかかな?」
精霊の森に入ってすぐのところにあるルーカスさんの山小屋風の小さな家の近くには、綺麗な湖がある。
その畔には、大きなモミの木があり、その根元には可憐な花々や多種多様な植物が自生している。
名前などはわからないが、その草花からは、様々な色を放つオーラのようなものが放たれているように見えるのだが……。
どうやら、その色がダークなものには毒性があり、明るく綺麗な色のものは、良薬または料理に重宝されているハーブの類いのものであるという区別ができるので、とても重宝している。