捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
そこに再びお婆さんの声が割り込んできたのだが。
「おやおや、その様子ですと、お嬢様にはご内密にされていたのですねぇ。それはそれはとんだやぶ蛇となってしまい、申し訳ございませんでした」
申し訳なさそうに謝ってきた直後に、なにやら難しい顔つきへと早変わりしたお婆さんの放つ、ただならぬ雰囲気と意味深な言葉に、
「ですが、もうあまり時間がございません」
何か心当たりでもあるのか、レオンの顔つきが真剣なものにガラリと变化した。
「それは一体どういうことだ?」
「詳しいことを説明している猶予はございませんので、単刀直入に申し上げます」
レオンの声に促され、そう言って前置きしてきたお婆さんから簡潔な説明がなされた。
なんでもお婆さんは、十五年前よりモンターニャ王国の王命により、このマッカローン王国に臣下として潜入していたそうだ。
それはかねてから、マッカローン王国が近隣の国々を侵略しようと企てている、という噂があったからなのだとか。
そしてその動きは、現国王が病床に伏し王太子が実権を握るようになったことで顕著になったようで。
先日、予言者により、マッカローン王国が近隣の国々を支配下に置き、帝国を築くための資金源として、精霊の森に埋蔵されているという秘宝を探し出すのに、聖女として召喚された私の能力が最も有効だと予言されたそうだ。
そうして最後に語られた次の言葉により、
「ノゾミ様の能力を利用するために、既にさっきの者たちとは違う使いが、ルーカス殿のところに向かっておりますことをお伝えするために参りました。おそらく、既に人質として捉えられているかと。ですので、お嬢様とご一緒に、早急に隣国へお帰りください」
命の恩人であるルーカスさんの身に、既に危険が及んでいることを知ることとなったのである。
レオンには色々と聞きたいことがあれど、ルーカスさんのことが気にかかってしょうがない。
勿論、私には、レオンと一緒に隣国に逃げるという選択肢などなかった。
「レオン、私今すぐ帰るッ!」
「ノゾミ、もちろん僕もそのつもりだよ」
「おふたりならそう仰ると思っておりました。私もお供させていただきます。さぁ、参りましょう?」
こうして、私の言葉を聞き入れてくれたレオンとお婆さんとともに、ルーカスさんの家へと向かうこととなったのだった。