捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
レオンにもしものことがあったらと思うと、今にも胸が押し潰されてしまいそうだ。
苦しくて苦しくてどうしようもない。
「そ、そんなの当てにならないじゃないッ!」
泣きそうな顔でレオンのことを見つめたままでいると、尚も強い力で抱き寄せられる。
そうしてぎゅうぎゅうと掻き抱き、
「だったらノゾミ、僕のことを信じて? 僕はノゾミと出会ったお陰で、この世に生を受けた意味をやっと見いだせたんだよ。ノゾミが好きだった男に似ていたのは癪だったけど、それも運命だったからに違いない。こうしてノゾミが傍にいてくれるだけで僕は生かされてきたんだ。そんな僕がノゾミを残して死ぬわけがないだろう? この出会いが運命だと証明するためにも、僕は必ず生き抜いてみせる。だからここで待ってて欲しい。お願いだよ」
私のことをなんとか踏み留めようとレオンは言葉を尽くしてくれる。
「でも……」
ひとりで行こうとするレオンのことが心配で、どうしても頷くことができない。
レオンの力になりたくとも、自分の意思ではどうにもできないのだ。
聖女として能力を授かっていながらも、レオンと一緒に行ったところで、足手まといになるだけだろう。
何の役にも立てない自分がふがいなくてしょうがない。
そこへ、私たちの様子を静かに見守ってくれていたソフィアさんの声が聞こえてくる。
「大丈夫ですよ、お嬢様。モンターニャ王国の騎士でもあるクリストファー殿下なら、これくらいの相手、造作もありませんよ」
「え? でも」
「モンターニャは、山々に囲まれたのどかな国ですが、その分、逃げ場もなく、攻め入ってこられては一溜まりもありません。なので昔から、男子には幼い頃より剣術が叩き込まれて参りました。獣人の血を受け継ぐ殿下は、普通の者より強うございますゆえ、ご安心ください」
確かに、ソフィアさんの言うように、レオンは剣の腕も立つのだろうし、身体能力だって人間とは比べものにならないのかもしれない。
けれど、戦いの場では、何が起こるかわからないのだ。
ましてやあんな(自分のせいで切られそうになった)場面を見たあとなのだから、そんなの心配に決まってる。