捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
レオンの説明を聞き終えた私が一番ショックだったこと。
それは、正体を明かさなかったことより、何にも告げずに私の前から姿を消そうとしたことだった。
だってもしも私がレオンの立場でも、きっと言い出せなかったと思う。
だからそんなことは全然気にもならなかった。
時間が経過するにつれ、ショックを通り越して、腹立たしくなってくる。思わずレオンに感情をぶつけてしまっていた。
「私のこと、こんなにも好きにしておいて、何も告げずにいなくなろうとしてたなんて、そんなの酷い! あんまりじゃないッ!」
私の言葉を耳にしたレオンは、心底驚いているようで、しばらく放心したあとで私のことを胸に掻き抱きながら言葉を紡ぎ出す。
「ノゾミにそこまで好きになってもらえていたなんて、とっても嬉しいよ。もう何があっても、絶対にノゾミとは離れたりしない。昨夜、そう心に決めたんだ。僕は聖女とか関係なく、君のことを愛している。自分の地位なんて捨ててもいいとさえ思ってたんだ。だから、ずっとここで一緒に暮らそうと思ってたんだよ」
「ーーッ!?」
レオンの思いがけない言葉に驚くと同時に、隣国の王子様であるレオンにそんなことさせられないとも思う。
でもそれはレオンとの別れを意味する。
なので何も答えることなどできないでいた。
そこに再びレオンから予想だにしなかった言葉が重ねられた。
「けど、もうこの通り家もなくなってしまった。だからね、ノゾミ。皆と一緒に僕の家族の元にきて欲しい。そして僕の伴侶として生涯傍にいて欲しいんだ。そうじゃなきゃ、おそらく呪をかけられた僕はもうノゾミなしじゃもう生きていけない。どうか僕を救うと思ってお願いだよ。ねぇ? ノゾミ」
「ズルイ。そんな風に言われたら断れないじゃない」
そんなことを口にしつつも、すべては異世界に召喚された私のことを気遣ってくれてのことだということは、レオンの真剣な眼差しを見ればわかる。
だからこそ、隣国の王子様であるレオンに頼っていいものかと、返答に躊躇してしまう。