捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
そんな私の想いをすべて見透かしたように、レオンは言葉を尽くして、尚も私の心に揺さぶりをかけてくる。
「今頃気づいたのかい? 僕は狼獣人の血を引いてるからね、野蛮でずる賢いんだよ。だからもう、逃がしたりしないから、覚悟を決めて僕の妃になってくれないと困るよ。だって、呪われて死ぬ運命だった僕を助けたのは、ノゾミなんだから。その責任をとってもらわないとね」
そう言ってくるなり悪戯っぽく微笑むと、私のことを抱きしめてくれていた腕を解いたレオンが私の足元に跪いた。
そうしていつものにこやかな微笑を湛えてそうっと大事な宝物でも扱えようにして私の手をとり、甘やかな声音で囁いてくる。
「ノゾミ、生涯かけて僕に君のことを護らせて欲しいんだ。だからどうか僕の妃になってください」
その直後、私の手の甲に恭しく口づけたレオンは、どこから見ても、麗しい王子様そのもので、見る者の視線も心をも惹きつけ魅了する。
あたかも魔法でもかけられているかのよう……。
身も心も惹きつけられ、魂ごと囚われてしまっている私には、どう足掻いたところでレオンから逃れることなどできないようだ。
きっとこの精霊の森でレオンのことを見つけた瞬間から、私とレオンには、恋という名の魔法がかけられていたのだろう。
だとしたらこの出会いは、昨夜レオンが言ってくれたように、本当に運命だったのかもしれない。
だったらこの運命に身を委ねよう。
「はい」
レオンに向けて返事を返した私の声は微かに震えていて、眦からは一粒の雫が零れ落ちてゆく。
私の返事を受けたレオンはキラキラと眩い笑顔を綻ばせると、私の身体を逞しい腕でふわりと包み込んでくれている。
あたかもこの喜びを全身で噛みしめるようにして、熱い抱擁をお披露目している私たちの周りには……。
私とレオンのことを見守ってくれていた、相変わらず賑やかなフェアリーにピクシー、そしていつになく陽気な声ではしゃぐルーカスさんの声らが絶えることなく飛び交っていたのだった。