捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 そんな私の気持ちごと優しく包み込んでくれるみたいに、終始聞き役に徹してくれていたクリスが何度も何度も飽きることなく優しく背中を撫で続けてくれている。

 思えば、まだクリスが狼の子供の姿だった時から、ずっと傍で寄り添ってくれていた。

 クリスの年齢は、私よりも二つ年上の現在、二十一歳。

 たった二つしか離れていないのに、既に王族として政務にも携わっているせいか、包容力があって、とっても頼りがいがある。

 そんなクリスのためにも、少しでも妻として妃として、恥ずかしくないように、少しでも助けになれるような存在でありたいと思う。

 お互いがお互いの助けとなれるように、力を合わせて、共に人生を歩んでゆきたい。

 やがて子供にも恵まれて家族が増えてゆくのだろう。

 この異世界で自分らしく精一杯生きてクリスと家庭を築いてゆきたい。

 私の両親と同じ道を辿らないためにも、自分なりに目一杯幸せになってみせる。

 ずっと傍で支えてくれるクリスのお陰で、ようやくそう思えるようになれた。

 もうこれからは、何があっても大丈夫。

 もう行動を起こさずに諦めて、ただ流されていた、あの頃の自分じゃない。

 大丈夫。私はこうしてちゃんと変わることができたのだから。

 クリスに胸の奥底に仕舞い込んでいたモノを何もかも曝け出すことができ、一頻り泣いて気持ちも幾分落ち着いてきた頃。

 この夜のために仕立ててくれた素敵な夜着の袖で涙を拭おうとしたら、クリスが濡れた頬を指で優しく拭いながら、いつもの優しい甘やかな声音で囁きかけてきた。

「ノゾミ。夫婦になったからには、僕はノゾミに寂しい思いなんてさせないからね。たくさん子供をもうけたら、寂しいなんて言ってるような暇なんてなくなるはずだよ。だから、できるだけたくさん子供をもうけようね」
「////ーーへッ!? こ、子供?」

 ただでさえ、初夜ということで意識していたというのに……。

 そこへきてのクリスからの子作り発言に、頓狂な声をあげた上に、顔どころか全身がカッと熱せられてしまう。

 そんな私のことなど気にもとめない素振りで、クリスは尚も私の羞恥を煽るような言葉を放ってくる。

「あぁ、心配しないで。この国の男は皆、子作りにも子育てにも積極的だからね」

 これらはきっと、さっきまでの湿っぽい雰囲気を払拭するためのクリスの気遣いであるのだろうが、恥ずかしいものは恥ずかしい。

「////……こっ、子作り」

 些細な言葉にも真っ赤になって、いちいち反応を示してしまう。

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