雪のように、溶けてなくなりたい
「夏目!」
「!?」
陽子の声で、ハッとした。
「もう授業終わったよ?いつまで、教科書眺めてるの?」
「え?あ…」
陽子に言われ周りを見渡すと、さっきまで席に座っていた生徒達が、ガヤガヤと好き勝手に動いている。
しまった…
また、フリーズしてた。
しんどくなると、意識を飛ばすようにフリーズしてしまう。
これ以上、心が疲れないようにしてるんだろうけど…
「夏目、みてみて!また雪降ってきたよ!!」
「うわっ…」
陽子に腕を引っ張られ、窓際まで連れて行かれた。
「ここの地域、滅多に雪降らないのにね。つい、この間数年ぶりに降ったばかりで、また降るなんて珍しい」
キラキラした笑顔で、陽子は窓の外を見ている。
「…そうだね」
どんよりした曇り空から、ひらひらと舞い落ちる雪。
窓に雪があたると、すぐに水滴になる。
「積もるかなぁ?この間は、吹雪いたわりに積もらなかったんだよね!」
「そうだね」
陽子の弾んだ声と、私の静かな声。
同じものを見ているのに、こんなにものの見え方が違う。
感じていることも、考えていることも、こんなに違う。
同じ世界を生きているのに、私はこんなに生きにくいと感じている。
私は、この世界に生まれてきたくなかった。