雪と虎

そんなに、心配せずとも。

ちゃんと、成人を前に、解放するのに。

「別に、大丈夫だから」

いつまでも、ここに居なくても。

わたしの父に当たる水薙政吉(みずなぎせいきち)は、鶴城会の若頭。つまりヤクザの人間だ。
虎太朗は父のいる水薙組に入ると申し出たのだろう。

病院まで付き添ってくれた虎太朗のことを話したし、何より石を投げたのは隣高の何人かという話は父にしていたので、虎太朗は何も気に病むことはない。

ヤクザにならなくても良い。
普通の社会で普通に働く選択肢がある。

虎太朗は頷くことは無かったけれど、わたしの左目をじっと見つめていた。

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