雪と虎
はる
まだ肌寒い春、わたしは高校を卒業した。
「おめでとう」
唯一の後輩に祝われた。
虎太朗だ。
虎太朗は留年したわけではなく、わたしの一つ下の学年。卒業式も変わらず、友人の一人も居らず写真も撮らず、打ち上げにも行かず、虎太朗と二人帰路についていた。
「春からわたしが学校に居なくて寂しい?」
友人も居ないわたしだが、卒業に少し浮かれて、虎太朗に尋ねた。
「ああ」
思いの外、素直に返答されて面を喰らう。面倒くさい質問には、遠くを見て生返事をするのに。
わたしはその顔を覗く。きょとんと、虎太朗がこちらを見返す。