雪と虎
この一年、家族よりも一緒にいたのに、何を考えているのか全く分からない。
表情の変化は分かるのに。
何故笑ったのか、何故不機嫌なのか、の理由が分からない。
「でも帰る場所は同じね」
「ああ」
あ、ほら。
少しだけ表情が柔らかくなった。
「あとねえ、バイトは宮倉さんのお店を手伝うの」
「帰りは迎えに行く」
「要らないから。すぐご近所だし」
宮倉さんのお店は居酒屋で、主にうちの人間が常連だ。父もそこなら、とバイトを許可してくれた。
虎太朗は黙った。承知できない、というポーズか。