雪と虎
「コタは心配性すぎ。正門まで歩いて三分なんだから」
「依知は世間を舐め過ぎだ」
「舐めるような世間なんて、周りに無かったもの」
小学校も中学も車で登下校。学校で話しかけられるのは事務連絡くらいで、何も知らずに遊びに誘ってくれた子は、翌日には他人になっていた。
関わったら締められるとか、怒らせたら殺されるとか、そういう音も葉もない噂が飛び交い、皆楽しく密めき合う。
わたしがそちら側に行くことは一生無いのだと、線を感じた。
母に泣きつく事だって出来た。車で登下校が嫌だ、この家にいるから友達ができない、と。