雪と虎
それでも子供ながらに、この家にいる意味を何となく察していて、言えなかった。
虎太朗は何も言わずにこちらを見ている。
「……大学行ったら、友達出来るかな」
100人なんて贅沢も、富士山の上でおにぎりを食べたりとか、日本中を駆け回りたいとか、そんなことは要らないから。
何でもないことを話して、笑えるような友達がほしい。
そうして、わたしは高校を卒業して、大学に入学した。
「コタ、聞いて! あのね、宇佐川さんと山田さんとお茶したの!」
バイト先の居酒屋に来る虎太朗に焼き鳥を出しながら報告する。