雪と虎
夜は裏門から帰る。正門の方に車が出入りすることがあるから。
「してない」
「しなよ。進路どうするの」
「働く」
すんなりと出た言葉に、目を瞬かせる。虎太朗は正面を見ていた。
「ここで?」
「まだ決めてない」
「そっか」
ほっとする。わたしは離れの鍵を開けた。
「今日は、ここで」
「どこか行くの?」
「野暮用だ」
「沼西さんに怒られないように」
ああ、と返答が聞こえ、家に入るのを見届けられた。
最近、夜に出歩いている。
そういえば噂のひとつの真偽をまだ確かめていない。