雪と虎
眼科検診が嫌なのではなく、あの待つ時間が嫌だ。
子どもじゃないので、そんなことも言っていられないけれど。
動き出す車から、外の景色をぼんやり見る。
「虎太朗が行きたがってました」
「ずっとそわそわしてるから、傍にいると落ち着かないんです」
だから、眼科の日は虎太郎ではない人が迎えに来る。
「あいつなりに心配してるんですよ」
「もう完治してるし、虎太朗の所為じゃないのに?」
それを言ったら、お終いだ。
虎太朗は無関係で、ただわたしを介抱してくれた近場に居た善人に過ぎない。
大通りで見知った姿を見つける。