雪と虎

引っ越し当日、虎太朗からの電話とメッセージで常に携帯が鳴りっぱなしになった。
それで携帯の電池が切れるくらいには。

これは大変だ、とわたしは携帯を買い替えた。

『もう大変よ』

宅配便で届いた荷物の依頼主の住所は、実家だ。品名には荷物と書かれている。静かに揺らしてみるが、爆弾や死体では無さそう。

しかし、この角ばった字には見覚えがある。

布テープを外すかどうか迷ったまま、段ボールを見つめる。重いので動かすのは面倒。

「何が大変?」
『コタくんがねえ、まあもう』
「え、コタが?」

母に、この荷物の詳細を尋ねようと電話をかけたんだけど。

< 22 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop