雪と虎
事の経緯は簡単に説明できる。
虎太朗の喧嘩にわたしが巻き込まれた。もっと詳細に言えば、虎太朗と喧嘩していた隣高の一人が投げた石がわたしの左目に当たった。
クリーンヒット。
野球のルールは知らないけれど、その用語は知っていた。
大量に出血して、倒れた地面の雪にそれは流れた。それが思うよりずっと綺麗で、最後に見るのが真っ白な雪じゃなくて良かったと、そう思った。
石を投げた人間たちが走り去る足音と、反対に駆け寄る足音。
それが虎太朗だと知ったのは、後からだった。
家の中に、その姿があった。
わたしは二度見て、三度目に驚いた。