雪と虎
わたしはどんな表情を作っていても、結局家のことを知ったら皆離れて行った。
それは正しい。
賢明な判断だ。
「早く彼女作って、出ていきなよね」
膝に乗せていた雑誌を閉じて、立ち上がる。
寝室へ向かおうと、リビングの扉を開けた。
取っ手を掴む反対の腕が、掴まれた。音も無く。
「え?」
扉がバタンと閉められ、腕が痛くない力で押し付けられている。驚いて固まり、押し付けている当人を見上げた。
虎太朗はわたしを見てはいなくて、足元に視線を彷徨わせていた。
先程まで炒飯を作っていた手が、わたしに触れている。