雪と虎
つみ
どうしたら良いか分からず、わたしは扉を引こうとしたけれど、虎太朗の力に敵うわけも無かった。
目の前の状況も判断出来ないのに、その肩越しのコンロにフライパンが放置されていて、きちんとガス火が消されているのを確認した。
いや、逃避か。
「なんで逃げるんだ」
心が読まれたようで、びくりと肩が震える。
「ここに越すのも言わなかったし、お前はいつも俺から逃げようとする」
「え……そんなこと」
「俺は依知が居ればそれで良い」
その言葉に、息を呑む。
そんなの、そんなの、絶望しかないのに。