雪と虎
都内では、何年ぶりかの大雪だと言っていた。地元で毎年雪は見ていたけれど、まるで異世界みたい。
それにしても、朝からずっと左瞼が痛い。古傷が痛むってやつなのかも。
寒さで時折引き攣る時はあったけれど、こんなに痛いのは久しぶりだ。
送迎の車は勿論遅れている。
雪だから早めに大学内も閉める、という放送も入ってしまった。
「あ、水薙さん」
学生ラウンジから出てきた同じ学科の森野くんがこちらを見た。
「授業終わり?」
「うん、さっき」
「電車動いてる?」
「どうだろ?」
車での送迎ばかりなので電車を気にしたことは無かった。