雪と虎

現在に限らず、虎太朗は前から何を考えているのかよく分からない。

ずきずきと痛む瞼に触れ、歩き出す。

「寒いし、早く帰ろ」
「痛むのか?」

返答をする前にその手を取られ、前髪が上げられる。うっすら残る傷あとが、瞼から目の下まで続いている。

あの日、わたしは虎太朗を見ていた。

喧嘩をよくしているという噂は知っていた。

隣高の制服の数人を相手にしていた虎太朗は面白いくらい人を往なし、投げ、殴った。
途中までは。

急に動きが悪くなり、最初の人数より半分になった相手の拳が入るようになった。

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