雪と虎

その喧嘩の仕方で、左肋骨を庇っているのだと分かった。

わたしに分かったくらいだ。相手もそれに気付き、畳み掛ける。雪の降った後で足場も悪く、虎太朗は膝をついた。

隣高の一人が何かを拾った。振りかぶるところが見えた頃にはもう、動いていたと思う。

わたしは虎太朗に興味があった。

同じだと思ったから。噂が噂を呼ぶほど、他人から興味を持たれているのに、他人から距離を置かれている。

ヤクザの娘。
関わったら締められる。
怒らせたら殺される。

皆好きに言ったら良い。本当のことなんてひとつも知らずに、どこかへ行ってしまえ。

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