雪と虎

眼帯をしていたので、わたしの視界が頼れるのは右目だけ。
え、虚像? と瞬きを何度かする。

「組に入ろうと思ってたけど、未成年だからって断られた」

そう言って、虎太朗はわたしの後ろをついてまわるようになった。何故なら、断られた話には続きがあったからだ。

「それなら政吉(せいきち)さんが、未成年のうちは依知(いち)のことを守るようにって言ったからじゃない?」

母はうちに虎太朗が来ていることを知っていたらしい。
にこにこしながら離れの台所に立ち、手を止めずに話してくれる。その神業を前に、わたしは佇んだまま聞く。

< 4 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop