雪と虎
眼帯をしていたので、わたしの視界が頼れるのは右目だけ。
え、虚像? と瞬きを何度かする。
「組に入ろうと思ってたけど、未成年だからって断られた」
そう言って、虎太朗はわたしの後ろをついてまわるようになった。何故なら、断られた話には続きがあったからだ。
「それなら政吉さんが、未成年のうちは依知のことを守るようにって言ったからじゃない?」
母はうちに虎太朗が来ていることを知っていたらしい。
にこにこしながら離れの台所に立ち、手を止めずに話してくれる。その神業を前に、わたしは佇んだまま聞く。