雪と虎
まく
冬はよく雪が降る場所から来たのだ。わたしたちは迷いなく進む。
耳も鼻先も肺に入る空気も冷たい。
唯一、繋がれた手だけが温かい。
「し……知ってるって?」
「お前はわざわざ出てきた。喧嘩の渦中の場所に」
「分かってたの?」
「俺はその怪我に関して、お前に謝ったことがあったか?」
そういえば、ない。
いや、謝る必要はないけれど。
「感謝はしてる」
虎太朗はこちらを振り向いた。
「依知が居なかったら、俺は死んでた」
死んでた、という言葉に心臓が掴まれる。
死なないでよ。
ずっと……。