雪と虎

何それ、わたしばっかり虎太朗を見てるみたいな。

喉元まで出かけて、お腹の方に落ちていった。
それはそうだ。最初からわたしが虎太朗を見ていたんだから。

「……コタ、うち出なよ」

雪をさくさくと踏みながら歩く。家までは30分ほど。

「彼女作って同棲とか、すれば?」
「依知と住んでる」
「いや、だから彼女」
「俺は依知が居れば良い」

この前も聞いた言葉。

「わたしが居たって何も意味無い」

ポケットに入れたカイロが熱を持つ。

「不自由ばっかりで……」

口から溢れた言葉に、泣きそうになった。

< 44 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop