雪と虎
何それ、わたしばっかり虎太朗を見てるみたいな。
喉元まで出かけて、お腹の方に落ちていった。
それはそうだ。最初からわたしが虎太朗を見ていたんだから。
「……コタ、うち出なよ」
雪をさくさくと踏みながら歩く。家までは30分ほど。
「彼女作って同棲とか、すれば?」
「依知と住んでる」
「いや、だから彼女」
「俺は依知が居れば良い」
この前も聞いた言葉。
「わたしが居たって何も意味無い」
ポケットに入れたカイロが熱を持つ。
「不自由ばっかりで……」
口から溢れた言葉に、泣きそうになった。