雪と虎
「不自由で良い」
「……良いわけない」
「なんで」
「だって、それなら、じゃあ一緒に……」
不自由が嫌なのは、わたしの方だ。
「一緒に、逃げてくれる?」
尋ねると、虎太朗は振り向いた。わたしを見る。
わかった、と頷けば。
そうしよう、と言ってくれたら。
わたしは何も言わずに手を離せたのに。
虎太朗は何も言わずに困ったように少し笑っただけだった。
そんなことは出来ない。
そんなのは夢物語だ。
わたしは、ここまで虎太朗に堕ちてきてもらった。
「お前は俺をここまで引き上げてくれた」