雪と虎
でも、違ったらしい。
虎太朗は笑ったまま続ける。
「毎日喧嘩してた俺に帰る場所と、そのきっかけをくれた」
現実を見てみれば、銀世界。
「お前と一緒なら、地獄にでも落ちて良い」
思わず笑ってしまう。
「逃げてはくれないのに、落ちてはくれるの?」
「俺が出来る精一杯だ」
「コタって、本当に馬鹿。わたしが手放すって、言ってるのに」
「ずっと隣に置いてくれ」
ずっと。
わたしは虎太朗の肩を掴み、抱き寄せた。
「じゃあ死なないで」
「分かった」
「言質取ったからね」
「同じく」
肩に埋まっていた顔がこちらを向く。ぐっと背中と腰の間を寄せられ、近づいた。