雪と虎
あい

死ぬかもしれない、と思ったのは初めてじゃない。

今までも何度かあった。その度、結局死ねずにいた。

隣高の制服に因縁をつけられ、喧嘩を受けていた。五対一、それくらいならいつもは余裕だった。

ただその日は、前に蹴られた肋が痛んだ。
それを庇うようにして避けていたのに気付かれたのか、内一人が集中的に攻撃してきた。

骨が内臓に刺さったら最悪だな。

そんな想像をしながらも、膝をついた。口の中の血を吐き出す。
立っているのは二人だけ。一人が腕を振りかぶった。

雪が冷たい。毎年懲りずによく降る。手も膝も冷たさから痛みへ、痛みもどんどんぼやける。

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