雪と虎

「断られたから……?」
「いっちゃんの目が怪我したこと、コタくんなりに気負ってるんじゃない? 彼、貴方の目が無くなったくらいの覚悟の決めようだったけど」
「来週には眼帯取れるのに」

悲しい哉。

虎太朗は眼帯の取れたわたしの顔を見つめ、少し安堵を見せた。それが初めて、虎太朗の見せた人間らしい表情だったように思う。あまり表情筋を使わない人間みたいだから。

噂は半分合っており、半分はデマだった。

喧嘩は強い。
しかし買うばかりで、売る分が無いらしい。本家に居る沼西さんが「体術ならうちの真ん中くらいです」と称賛していた。

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