雪と虎
全く、誰かも分からない。
なのに、どうして。
「……そう……よかった」
優しそうに笑うんだ。
その名も知らない女子生徒によって、俺はまた死に損なった。
それが俺の、罰だ。
「やっぱり、雪も悪くないかもね」
箸を持ちながら依知は言った。
「そうか?」
「うん、お蕎麦が美味しい。いただきます」
「食べる前から」
ふ、と笑う。
「美味しいんだから良いでしょ」
「それは良かった」
死に損なって、あいを知った。
おしまい。
20220124