雪と虎
家は湖沿いのモーテルでは無かった。
「家、帰らなくて良いの?」
「ああ」
「モーテルだっけ」
「は?」
「え、なに」
「何だそれ」
そもそもモーテルを知らなかった。湖沿いのアパートの一階に家はあるらしい。パチスロに金を溶かす父親と一緒に住んでいたけれど、いつの間にか帰ってこなくなったらしい。
「どこかに沈んでるかもな」
冗談なのか本当なのか分からない顔で、遠くを見ていた。
「浮いてるよりは良いんじゃない」
なのでわたしもそう返すと、虎太朗は小さく肩を震わせて笑っていた。笑っているのを初めて見た。