雪と虎
友達の一人もいないわたしと、喧嘩ばかりで一匹狼の虎太朗は、揃えば一緒にいた。
大抵は虎太朗が気づけば傍に居ただけ、だけれど。
「なんで離れに住んでる、んですか」
当たり前にわたしの部屋の座布団に座ってタオルを畳んでいる。虎太朗はわたしというより、この離れの番犬になりつつあった。
「なに、その敬語」
「皆さん、敬語、なので」
「片言すぎるじゃない。止めなよ」
「……そうする」
笑うと、心外そうに視線を逸らす。
わたしはテーブルを拭いた。一匹狼のくせに、『本家の皆さん』のことは気にするのか。