雪と虎

その言葉に納得したのかどうかは兎も角、虎太朗は「そうか」と頷いた。

それからわたしの顔を覗く。

「次はなに?」
「視力は戻ったのか」

見ると、洗濯物は畳み終えられていた。任せると仕事は早い。

「まだボヤケてる……っていうか、これ以上元には戻らないって」

一昨日、眼科医に言われた言葉をそのまま。
失明するかもしれない、と脅されたのに比べれば全然良い方だ。左右の視力が違うくらい。

虎太朗は先程と同じように、小さく頷く。了解、承知した、と言ったところか。

その表情の奥に堅いものが見えて、わたしは思わず笑った。

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