大好きな兄と私のふたり暮らし②
すると、隣に立っていた翔太さんが口を開いた。
「はじめまして。柏木 翔太と申します。もし、よろしければ、お兄さんもご一緒にいかがですか? すぐそこですから」
翔太さんに誘われたお兄ちゃんは、私とみんなの顔を見比べて尋ねる。
「お邪魔じゃありませんか?」
すると、看護師の光が目をキラキラさせて答える。
「全然、迷惑なんかじゃありませんよ! ぜひ一緒に行きましょうよ。私、お兄さんとお話してみたかったんです」
光はそう言うと、いきなりお兄ちゃんの腕に抱きついてそのまま一緒に連れて行こうとしている。
酔った勢い?
いや、これはわざとだ。
あれ、胸当たってるし。
さっきまで、職場の同僚しかいないとぼやいていた光は、さほど酔ってはいなかった。
お兄ちゃんがかっこいいから、狙ってるんだ。
そう思うと、普段は仲良しの光だけど、イラッとする。
私は、お兄ちゃんの反対側のシャツの袖をつまんでツンと引いて尋ねる。
「お兄ちゃん、ダーツできるの?」
すると、お兄ちゃんは、光に抱きつかれてた右手を何事もなかったかのように持ち上げて解くと、私の頭をくしゃりと撫でた。
「さぁ、どうかな? 愛香は? 上手いのか?」
お兄ちゃんは少し屈んで私と目を合わせて尋ねる。
「ううん、やったことないの」
私が答えると、お兄ちゃんはにこりと笑った。
「じゃあ、お兄ちゃんが教えてやる」
なんだかそれが、光より私が大切って言ってくれてる気がして、嬉しくなる。
私たちは、連れ立って徒歩5分ほどのところにあるダーツバーへと移動した。
お店に着くと、お兄ちゃんは、
「まずお手本」
と言って、投げてみせる。
お兄ちゃんの投げた矢は、真ん中からは少し外れた細いところへ当たった。
その瞬間、「おお!」と低い声の歓声が上がる。
ん?
真ん中じゃないのに何で?
不思議に思った私は首を傾げる。
すると、お兄ちゃんは、私の方へ振り返り、
「愛香は無理せず、真ん中を狙えばいいから」
どういうこと?
わけが分からない私の横で翔太さんがお兄ちゃんに声をかける。
「お兄さん、すごいですね! 今の狙ったんですか!?」
お兄ちゃんは少し肩をすくめて答えた。
「狙ったけど、当たったのはまぐれだよ」
何?
あのなんでもなさそうなところへ当てるのってすごいの?
ルールが分からない私は、会話に入れない。
「はじめまして。柏木 翔太と申します。もし、よろしければ、お兄さんもご一緒にいかがですか? すぐそこですから」
翔太さんに誘われたお兄ちゃんは、私とみんなの顔を見比べて尋ねる。
「お邪魔じゃありませんか?」
すると、看護師の光が目をキラキラさせて答える。
「全然、迷惑なんかじゃありませんよ! ぜひ一緒に行きましょうよ。私、お兄さんとお話してみたかったんです」
光はそう言うと、いきなりお兄ちゃんの腕に抱きついてそのまま一緒に連れて行こうとしている。
酔った勢い?
いや、これはわざとだ。
あれ、胸当たってるし。
さっきまで、職場の同僚しかいないとぼやいていた光は、さほど酔ってはいなかった。
お兄ちゃんがかっこいいから、狙ってるんだ。
そう思うと、普段は仲良しの光だけど、イラッとする。
私は、お兄ちゃんの反対側のシャツの袖をつまんでツンと引いて尋ねる。
「お兄ちゃん、ダーツできるの?」
すると、お兄ちゃんは、光に抱きつかれてた右手を何事もなかったかのように持ち上げて解くと、私の頭をくしゃりと撫でた。
「さぁ、どうかな? 愛香は? 上手いのか?」
お兄ちゃんは少し屈んで私と目を合わせて尋ねる。
「ううん、やったことないの」
私が答えると、お兄ちゃんはにこりと笑った。
「じゃあ、お兄ちゃんが教えてやる」
なんだかそれが、光より私が大切って言ってくれてる気がして、嬉しくなる。
私たちは、連れ立って徒歩5分ほどのところにあるダーツバーへと移動した。
お店に着くと、お兄ちゃんは、
「まずお手本」
と言って、投げてみせる。
お兄ちゃんの投げた矢は、真ん中からは少し外れた細いところへ当たった。
その瞬間、「おお!」と低い声の歓声が上がる。
ん?
真ん中じゃないのに何で?
不思議に思った私は首を傾げる。
すると、お兄ちゃんは、私の方へ振り返り、
「愛香は無理せず、真ん中を狙えばいいから」
どういうこと?
わけが分からない私の横で翔太さんがお兄ちゃんに声をかける。
「お兄さん、すごいですね! 今の狙ったんですか!?」
お兄ちゃんは少し肩をすくめて答えた。
「狙ったけど、当たったのはまぐれだよ」
何?
あのなんでもなさそうなところへ当てるのってすごいの?
ルールが分からない私は、会話に入れない。