大好きな兄と私のふたり暮らし②
すると、お兄ちゃんは私に教えてくれた。
「1番外側に点数が書いてあるだろ? 大体その点数なんだけど、外側の細い輪に当たるとその2倍、内側の細い輪に当たるとその3倍の点が入るんだ。で、中心に当たると50点。分かった?」
「……うん」
うなずいた私は、改めてお兄ちゃんの矢の位置を確認する。
20点のところ内側の細い輪だから……
「あれは60点?」
「そ」
お兄ちゃんは笑顔でうなずく。
はっ!
「じゃあ、あそこ、真ん中よりすごいの!?」
驚いた私は、お兄ちゃんを見上げた。
「まぁね。でも、こんなの楽しければいいんだよ。愛香はまず、当てることを考えなきゃな」
そう言ってお兄ちゃんは、私の手を取って、持ち方や投げ方を教えてくれる。
「お兄さん、私にも教えてくださいよ」
横から光が声をかけるけれど……
「俺なんかが教えなくても、そこに教えたそうにしてるコーチが何人もいるよ」
とさらっと言って断ってしまう。
お兄ちゃんが教えるのは私だけ。
その優越感になんだかとっても嬉しくなる。
すると、今度は翔太さんが寄ってくる。
「お兄さん、僕にも教えてくださいよ」
お兄ちゃんは、私に教える傍ら、翔太さんにも教え始めた。
私は、こうして初めてのダーツを楽しく終えた。
みんなと別れて、私はお兄ちゃんと2人で家路に就く。
「ねぇ、お兄ちゃん、なんでわざわざ迎えに来たの?」
私は歩きながら、お兄ちゃんに尋ねる。
「そりゃあ、愛香が心配だからに決まってるだろ」
そうだけど……
「心配だからって、普通、お兄ちゃんは合コンのお迎えになんて来ないよ」
そんなの聞いたことない。
「……親父に頼まれてるからな。愛香に変なムシが付かないようにって」
そうかもしれないけど……
「じゃあ、これからも合コンのたびにお兄ちゃんが迎えに来るの?」
私が尋ねると、お兄ちゃんの足が止まった。
「愛香はこれからも合コンに行きたいのか?」
暗がりでお兄ちゃんの表情はよく分からないけど、声がなんとなく不機嫌そうに感じる。
なんで?
「いや、行きたいっていうか、私だってそろそろ彼氏くらい欲しいなぁって思うから……」
いつまでもお兄ちゃんに片思いしてるわけにはいかないもん。
「……じゃあ、もし、俺が……」
そこまで言ってお兄ちゃんは、止まってしまった。
ただ、じっと暗がりで私の方を見ているのは分かる。
俺が……なに?
「お兄ちゃん?」
私が声をかけると、お兄ちゃんは慌てて目をそらす。
「いや、なんでもない。さ、愛香、帰ろう」
お兄ちゃんはそう言うと、スッと私の手を握って歩き出した。
えっ?
私、今、お兄ちゃんと手を繋いでる?
なんで?
私と違って、お兄ちゃんは酔ってないよね?
分からないながらも、私は、そのお兄ちゃんの大きな手の温もりが心地よくて、そのまま手を引かれて、家までの十数分の道のりをふわふわと舞い上がるような気分で歩いていった。
─── Fin. ───
レビュー
感想ノート
ひとこと感想
楽しみにしてます。
お気軽に一言呟いてくださいね。
「1番外側に点数が書いてあるだろ? 大体その点数なんだけど、外側の細い輪に当たるとその2倍、内側の細い輪に当たるとその3倍の点が入るんだ。で、中心に当たると50点。分かった?」
「……うん」
うなずいた私は、改めてお兄ちゃんの矢の位置を確認する。
20点のところ内側の細い輪だから……
「あれは60点?」
「そ」
お兄ちゃんは笑顔でうなずく。
はっ!
「じゃあ、あそこ、真ん中よりすごいの!?」
驚いた私は、お兄ちゃんを見上げた。
「まぁね。でも、こんなの楽しければいいんだよ。愛香はまず、当てることを考えなきゃな」
そう言ってお兄ちゃんは、私の手を取って、持ち方や投げ方を教えてくれる。
「お兄さん、私にも教えてくださいよ」
横から光が声をかけるけれど……
「俺なんかが教えなくても、そこに教えたそうにしてるコーチが何人もいるよ」
とさらっと言って断ってしまう。
お兄ちゃんが教えるのは私だけ。
その優越感になんだかとっても嬉しくなる。
すると、今度は翔太さんが寄ってくる。
「お兄さん、僕にも教えてくださいよ」
お兄ちゃんは、私に教える傍ら、翔太さんにも教え始めた。
私は、こうして初めてのダーツを楽しく終えた。
みんなと別れて、私はお兄ちゃんと2人で家路に就く。
「ねぇ、お兄ちゃん、なんでわざわざ迎えに来たの?」
私は歩きながら、お兄ちゃんに尋ねる。
「そりゃあ、愛香が心配だからに決まってるだろ」
そうだけど……
「心配だからって、普通、お兄ちゃんは合コンのお迎えになんて来ないよ」
そんなの聞いたことない。
「……親父に頼まれてるからな。愛香に変なムシが付かないようにって」
そうかもしれないけど……
「じゃあ、これからも合コンのたびにお兄ちゃんが迎えに来るの?」
私が尋ねると、お兄ちゃんの足が止まった。
「愛香はこれからも合コンに行きたいのか?」
暗がりでお兄ちゃんの表情はよく分からないけど、声がなんとなく不機嫌そうに感じる。
なんで?
「いや、行きたいっていうか、私だってそろそろ彼氏くらい欲しいなぁって思うから……」
いつまでもお兄ちゃんに片思いしてるわけにはいかないもん。
「……じゃあ、もし、俺が……」
そこまで言ってお兄ちゃんは、止まってしまった。
ただ、じっと暗がりで私の方を見ているのは分かる。
俺が……なに?
「お兄ちゃん?」
私が声をかけると、お兄ちゃんは慌てて目をそらす。
「いや、なんでもない。さ、愛香、帰ろう」
お兄ちゃんはそう言うと、スッと私の手を握って歩き出した。
えっ?
私、今、お兄ちゃんと手を繋いでる?
なんで?
私と違って、お兄ちゃんは酔ってないよね?
分からないながらも、私は、そのお兄ちゃんの大きな手の温もりが心地よくて、そのまま手を引かれて、家までの十数分の道のりをふわふわと舞い上がるような気分で歩いていった。
─── Fin. ───
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楽しみにしてます。
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