離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 ……お節介だなぁ、このふたり。

 ふっと苦笑するも、俺は自分の心の中を整理し、少しずつ言葉にした。

「俺、佳乃が好きだよ。もちろん別れたくないって思う。……でも、出向が決まってから、だんだん臆病になってきてさ」

 幼い頃に海外を飛び回り、語学力は人並み以上。それでも志望先を外務省にしなかったのは、こんな風に誰かを愛した時、相手を悲しませるとわかっていたからだった。

 財務省にいたって転勤や出向はあるが、外交官のように海外を転々とするケースは少ない。

 が、しばしば他省庁から外務省に出向する例もあり、今回は運悪くそれに該当してしまった。

「俺、今まで、誰にも引き留められない人生だったんだ。だから、佳乃なら待っていてくれるって思いたいのに、信じ切れなくて……話すの躊躇ったままだった」
「柳澤さん……」

 花純ちゃんが、気の毒そうに眉尻を下げる。それ以上かける言葉が見つからないようで、彼女は助けを求めるように司波の服をくいくいと引っぱった。

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