離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「もし、時成さんが柳澤さんの立場ならどうします?」
「それって、花純を連れて行けない前提だよな。だとしたら、『俺がどこへ行こうと何年離れようと、待ってろ』と言うだけだ。あと、『浮気したら承知しない』とかな」
「浮気なんてしませんよ! あとが怖いですもん」
「……ふうん。仕置き、好きなくせに」
司波がにやりと口角を上げて囁くと、花純ちゃんがわかりやすく真っ赤になる。
こいつら、俺が目の前にいるの忘れているだろう。
じゃれ合うふたりを呆れたように観察していたら、司波が気づいてゴホンと咳払いする。
「とにかくお前は帰って、佳乃さんと話すべきだ」
「そうですね。柳澤さんがどうして言い出せなかったのかも含めて、ちゃんと教えてあげないと、佳乃ちゃんがかわいそうです」
「うん……だよな」
ふたりに背中を押され、俺は司波家をあとにする。
佳乃は家にいるだろうか。俺の顔を見たくなくて、外出しているかもしれない。
傾きかけた午後の日差しを受けながら帰路につき、マンションへ帰る。緊張気味に玄関のドアを開けると、佳乃の靴のほかに、見慣れない女性用のパンプスが揃えて置いてあった。