離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
思わず尖らせた唇に、真紘さんがチュッと音を立ててキスをする。一度離れたと思ったら、二度、三度と唇を啄まれ、お互いの吐息が甘くなっていく。
きっと、私を黙らせるつもりだ。
その手には乗らないぞと思うのに、彼の指先が素肌をなぞり始めると、さっきまでの行為でまだ敏感な体が勝手に反応してしまう。
「ダメ、真紘さん……」
「そんなやらしい声じゃ説得力ないって」
意地悪く囁いた彼が、首筋から鎖骨へとキスの雨を降らせていたその時。
弾けるリップ音とシーツが擦れる音に交じって、スマホの着信音が微かに聞こえた。棚の上に置いてある、私のバッグの中からだ。
「ごめんなさい、電話みたい」
「……残念。どうぞ」
真紘さんは苦笑しながらも私を解放してくれ、とりあえず薄手の掛け布団を体に巻き付けてベッドから下りる。バッグから出したスマホには、雨音さんの名が表示されていた。
「もしもし、佳乃です」
《急にごめんなさいね。今、少し話せる?》
「はい。自宅にいるので大丈夫です」
雨音さんの声に応えつつ、ベッドに腰を下ろす。すると、背後からにじり寄ってきた真紘さんが、私を緩く抱きしめ、甘えるように肩に顎を乗せた。