離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「そうですね。あ、でも、接近といったって専務は別に上司として私を心配してくれただけなのにすみません」
「……鈍っ。なるほど、これじゃ護衛をふたりもつけたくなるわけだ」
専務は呆れたように笑うと、私や司波さんたちに頭を下げ、その場を離れる。
ポケットの中から『カイトサン、ドンマイ、ドンマイ』と三号くんが励ます声が、微かに聞こえた。
「では行きましょう。車で来ているので家までお送りします」
雨郡さんが紳士的に先導し、私と司波さんがその後に続く。
「なんだかすみません、お忙しい中わざわざ来ていただいて」
「いえいえ。ヤツが帰ってきたら思う存分顎で使うつもりなんで、気にしないでください」
司波さんのブラックジョークにクスクス笑い、駐車場へ向かう。
もしかしたら、真紘さんが彼らを呼んだ本当の目的は、ひとりになった私を寂しがらせないようにするためだったのかもしれないな……。
真紘さんの気遣いに改めて感謝しながら、ふたりの頼もしい護衛とともに、私は自宅に戻るのだった。