離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 真紘さんが旅立ってから、マンションの部屋は急にがらんとした。

 お喋りで明るく、小さなバーカウンターで楽しそうにシェイカーを振り、ベッドの中では急に大人の色香で私を惑わせる彼が、どこにもいない。

 その状況に慣れるまでには数週間かかったが、真紘さんとは毎日短くてもメッセージのやり取りをし、週末にはビデオ通話で顔を見ながら話をした。

 もちろん寂しいけれど、その分量はお互いに同じだと思えたし、真紘さんは電話でもメッセージでも毎回愛を囁いてくれたから、不安にはならなかった。

 そうして、遠距離生活を続けること、およそ半年。秋も深まってきた十一月の初旬、仕事の後で雨音さんと一緒にショッピングモールを訪れた。

 目的の店は、人気のランジェリーショップ。実は私たち、勝負下着を選びに来たのである。

「久しぶりに会うんだから、大胆でもむしろ喜ぶわよ」
「え~……」

 私は明日の祝日と土日、それに有休を二日合わせて五連休を取った。

 弾丸ツアーにはなってしまうけれど、そこで三泊五日のギリシャ旅行を計画している。ちょうどオフシーズンなので開いている店は減るそうだが、そのぶんゆっくり観光できるよと真紘さんが教えてくれた。

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