離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「ほら、この辺はどう?」
雨音さんがハンガーをあれこれ取って、鏡の前で私の体にあてる。セクシーすぎるものは却下だけれど、露出が控えめで単純にかわいいデザインの商品には、私もちょっと惹かれた。
「これならいいかもです。色もきれい」
透け感はあるがそこまで露骨ではない、ラベンダー色の上下セット。ブラの胸元は花柄のレースで、中央に黒の小さなリボンがついている。
「私は決まりましたから、次は雨音さんです」
「そうね。でも、難しいわね……」
顎に手を当て、真剣に悩む雨音さん。頭の中では恋人を想っているに違いない。
「常務ならなんでも似合うって言ってくれますよ」
冷やかすように言うと、雨音さんはぽっと頬を赤く染める。雨音さんの新しい恋人は、なんとあのダンディな前門常務なのである。
以前から雨音さんに思いを寄せていた常務は、一年ほど前に正面から告白したものの、雨音さんに断わられてしまったそう。
当時の雨音さんはまだ男性を信用しきれず、常務のことも〝体が目当てなのでは〟と勘ぐってしまったからだ。