離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
それでも常務はあきらめず、カップルクラッシャーとして間違った方向へ進んでいく雨音さんを気にかけ、ことあるごとに『もうやめろ』と諭した。
いつか真紘さんと私と雨音さんの三人で食事をしたあの時、急用でもないのに常務から電話がかかってきたのは、『これで最後にするから協力して』と、雨音さんに頼まれたからだそうだ。
『ごめん、やっぱり僕には向かない役回りだったな。引き留めて申し訳ない。今、親しい人たちと食事中だろう? 早く戻った方がいい』
だから、あの時の常務は歯切れが悪かったのだ。食事の後で雨音さんにかかってきた電話も常務からで、彼はとにかく雨音さんの目を覚まさせようと必死だったらしい。
彼は雨音さんの過去についても理解していて、彼女が専務付きの秘書になるのは絶対反対だった。
しかし、だからといって、彼女に想いを寄せる自分のそばにいさせるのは公私混同ではないかと悩んでいたそうで……。
『専務が柳澤さんを指名したと聞いて、不謹慎だがホッとした。公私混同だろうがなんだろうが、危なっかしい彼女のことは、やっぱりそばに置いておきたいんだ』
雨音さんのいない場で常務にそんな話をされ、自分のことではないのにキュンとした。彼の雨音さんへの想いは本物だ。