離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
そうしてふたりは夏頃から付き合い始めたが、常務は雨音さんの過去に配慮しているのか、キス以上の行為に進む気配がないらしい。
逆に雨音さんの方が焦れてきてしまい、思い切って勝負下着で誘惑してみようと奮起し、今に至る。
「ねえ佳乃ちゃん、これは?」
雨音さんが手に取ったのは、真っ赤な総レースのベビードール。胸元を隠す布の面積は極めて少なく、雨音さんの豊満バストはほぼ隠れないだろう。
女の私ですら、想像しただけで鼻血が出そうだ。紳士的な常務だって、さすがに陥落するはず。
「いいと思います。健闘を祈ります!」
「ありがとう。佳乃ちゃんも頑張ってね!」
お互いの恋にエールを送り合い、思い思いの下着を購入する。
真紘さん、どんな反応をするだろう。喜んでくれるといいな……。
私は翌日の夜に日本を発ち、パリを経由してアテネへ向かった。
大学の卒業旅行でアメリカに行ったきり、海外旅行は久しぶり。しかも、ずっと会えなかった最愛の夫に会いに行くひとり旅なので、興奮気味だ。
到着前に少しだけ眠ったあと、機長の英語のアナウンスで目が覚める。リクライニングとテーブルを元に戻し、シートベルトを着けて窓の外に視線を向ける。